下村係長と同期の榎本くんの、シェア彼女…!?
食べてるはずなのに味がしない。


昨日の親子丼みたいな味を感じられない。


お店の雰囲気に緊張してるからなのか…ワインのせいなのか、噛んでも噛んでも砂の味。


わたしの目の前にいる榎本くんは王子さまだったはずなのに…なんだか気持ちにもやがかかったような迷子の心。


どうしちゃったんだろう。


こんな時、下村係長だったら「飲めないくせに飲むな」とか、「箸で食える店がいい」とか言うかな、なんて。


頭には係長ばかりが浮かぶ。


変だよ…おかしいよ。


下村係長は間違った告白相手で、好きなのは榎本くんだったはず…はずなのに。


榎本くんも“好き”をくれたのに。


やっぱりわたし、酔ってる…。


「ちゃんと送ってあげるから、安心して飲んでね?」


榎本くんがどんどんワインを追加しちゃんから、ついつい口にしてしまう赤い液体。


お店を出る頃には榎本くんに支えてもらわなきゃ歩けないほど、頭の中も足下もおぼつかなかった。


「ホント、加奈ちゃんて放っておけないな。タクシー乗ろ?送るよ」


「平気。1人で…」


「危ないよ。ボク、もう少し加奈ちゃんと一緒にいたいし。住所、教えてよ」


榎本くんにタクシーに押し込まれて、そのままわたしのアパート。


階段では榎本くんがほぼわたしの足状態。


鍵を開け、クーラーと明かりをつけると、わたしはキッチンでまず水を一杯飲もうとしたのに、突然のしゃっくりで酔いの回った頭は酸欠状態。
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