火恋 ~ひれん~
「飯はまだだろう? 苦手なものがあったら先に言え」

 手だけ恋人繋ぎをして、渉さんはわたしに顔を向ける。
 ・・・・・・実は。そのままシートに倒され狼狽えている最中、運転手さんが『・・・若頭代理、その辺で』と水を差してくれた、・・・という経緯があって。不本意だけれど手だけで我慢してくれてる・・・のだと思う。

「そうですね・・・、脂っぽいものは全般的に苦手です」

「肉は駄目なのか?」

「食べますけど、赤身だけです。脂身が嫌いで・・・」

「ふぅん・・・道理でな」

「?」

「いや。赤身で上手い肉、食わせてやるからお前はもう少し太れ。抱き心地ってものがあるんだ・・・男には」

 少し悪戯気な、含んだ笑みを浮かべた彼。意味が分かって赤面してしまう。




 

 それから渉さんは本当に、料亭のような高級ステーキ店に連れて行ってくれて。名前を聴いただけで恐縮しそうな美味しいお肉を、何度もご馳走してくれましたね。お陰でやっぱり体重計が気になっちゃったんですから。
 
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