リアルな恋は落ち着かない
「アイドルが来るなんて、仕事中邪魔そうですねえ」

昼休憩終了間際。

トイレでばったり会った美瑠久ちゃんは、グロスをぬりぬり、鏡の前で私に話しかけてきた。

その点は納得で、私も頷く。

「ひとりじゃないだろうしね。カメラマンの人とか・・・。仕事は落ち着かない気がする」

「ですよ!しかも明日からって!どんだけ直前なんですか」

「まあ、本来は違う会社の仕事だったから・・・。それは仕方ないのかも」

「まったく。なんでうちになるかなあ」

ブツブツと呟きながら、お化粧直しを完成させた美瑠久ちゃん。

そしてポーチのチャックをジジジとしめて、リップを塗った私に言う。

「しかも五十嵐さんが担当って。橘内さん、五十嵐さんとまりんが一緒に仕事するなんて、なんか嫌じゃないですか?」


(ドキ・・・)


そうなのだ。

あの後聞いた話では、明日から今週いっぱい、まりんちゃんはずっと五十嵐くんと一緒に行動するそうだ。

9時から17時まで、まさに一日中つきっきりの状態になる。

仕事だし、アイドルといういわば夢の世界の人だから、別次元のことと割り切って、気にすることはないかもしれない。

けれど、五十嵐くんが女の子と一日中ずっと一緒にいるなんて、ヤキモチを焼かない方が無理なのではないかと思った。


(・・・な、なんて!美瑠久ちゃんには、こんな気持ちは言えないもんね)
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