リアルな恋は落ち着かない
翌日の朝は、半袖ではもう寒かった。

9月も、あともう少しで終わりをむかえる。

通勤には、長袖のブラウスやカットソーを着ているけれど、寒くなった時用にとカーディガンを持ち歩くのは、毎日必須のことだった。



いつもより少し遅い電車に乗って、タシロワークスのある関内駅で降車する。

そして大通りを海に向かって歩くのが、会社へ向かう道になる。

歩く途中、少し先に見慣れた後ろ姿があって、私は瞬時に胸を鳴らした。


(五十嵐くんだ)


キョロキョロと周りを確認するも、うちの社員は他には誰もいないよう。

どうしようかと迷いながらも、私は思い切って、大きな背中に小走りをして駆け寄った。

「・・・っ、おはよう!」

我ながら、なかなか大胆な行動だった。

けれど、昨日の反省も踏まえた私は、勇気を出して踏み切った。

五十嵐くんは、一瞬とても驚いた顔をしたけれど、すぐに挨拶してくれた。

「・・・ああ。おはようございます」

朝から爽やかすぎる笑顔。今日も変わらずかっこいい。

見下ろされると、それだけで頬が火照ってしまうようだった。

「めずらしいですね、この時間。いつもより遅いですよね」

「うん。ちょっと、一本乗り過ごしちゃって」

「そうですか。まあ、この時間でも間に合うから」

彼が笑う。

それだけで、全てが満たされていくようだった。
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