リアルな恋は落ち着かない
「!」


(す、すごい透けてる・・・!)


ブラウスの下のキャミソールも、その下にある下着の形も、濡れて透けてしまっていた。

私は途端に、頬の温度をさらに数度上昇させた。


(よりによって、白いブラウス着てるから・・・)


下着が透けていることも。

それを五十嵐くんに指摘されたのも、見られた事実も恥ずかしかった。

ジャケットの襟元を持ち、胸元を隠した私に、五十嵐くんは目を逸らして「すいません」と謝った。

「・・・セクハラですね、完全に」

「あ・・・う、ううん・・・」

なんて答えればいいのかわからなかった。

セクハラだとかそうじゃないとか、そんな問題はどうでもよくて、ただただ私は恥ずかしかった。

ジャケットにくるまれたまま、それ以上の答えに悩んでいると、五十嵐くんは低い声で呟いた。

「・・・でも、そうしてて下さい。他の男に見られるのは、オレが嫌だし」

そう言うと、五十嵐くんは横浜方面へ向かうホームの階段を歩き出した。




関内駅の上りホームは、ビジネス街があるだけに、残業帰りの人がたくさん電車を待っていた。

私たちは、その最後尾には並ばずに、ホームの壁際の空いている場所に、どちらからともなく二人で佇む。

大きなジャケットに包まれた私。

さっきから、サラリーマンたちが私のことをチラチラ見ている。


(そうだよね、こんな格好・・・)


透けているブラウス姿も恥ずかしいけど。

男物のジャケットを、羽織っているのも恥ずかしかった。


(五十嵐くんは、恥ずかしくないのかな・・・)


自分はワイシャツ一枚で、隣には、自分のジャケットを着た私が立っていて。

休日のデートスポットならまだしも、平日の夜の駅のホームでは、かなり目立つ格好だった。
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