リアルな恋は落ち着かない
結局、いつもより遅い時間に会社に足を踏み入れた。

始業時間まであと5分。

私は上りのエレベーターを待っていた。

「あ!橘内さーん!おはようございまーす!」

元気な声に振り向くと、にっこり手を振る美瑠久ちゃん。

私はなんとか笑顔を作って、彼女に向けて挨拶をした。

「おはよう・・・」

「わ!橘内さん、すごい顔色悪いですよ!?大丈夫ですか!?」

「・・・うん・・・」

美瑠久ちゃんが駆け寄ってくる。

そしてじーっと私を見つめた後で、彼女なりの結論を出す。

「いや、なんかやばいっぽい!!ちょっと医務室行きましょうよ!」

「あ、ううん、へいきだよ・・・」

心配そうに見つめる彼女に、なんとか返事をするけれど。

なんとなく、血の気が引いていくような、そんな感じも自覚していた。

「ダメダメ!なんか平気じゃないっぽいもん。部長には言っておきますから、ちょっと休みに行きましょう」

美瑠久ちゃんが、支えるように私の腕を両手でつかんだ。

向き合って、彼女と顔を見合わせた瞬間、視界の隅に入った人に、心臓がドキリと嫌な音を出す。


(・・・っ)


五十嵐くんだった。

今は、誰よりも会いたくない人だった。

まりんちゃんとキスをした彼。

それでまりんちゃんの方がいいんだって、そう言ったらしい彼。

もしもそれが嘘だとしても、もう、この想いは封印しなきゃいけなかった。
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