リアルな恋は落ち着かない
まりんちゃんが去った後、私はしばらく一歩もそこを動けなかった。

あまりにも、今見た写真にショックを受けて。

まりんちゃんに言われた言葉に、やっぱりとてもショックを受けて。

私はただただ呆然と、立ち尽くしたままでいた。


(あれは、ほんとなの・・・?)


『私とキスしたら、私の方がいいって言ってました』


まりんちゃんの、作り話じゃないかって。

写真だって合成したんじゃないかって、そんなことを疑ってみる。


(でも・・・)


写真の二人が、目に焼き付いて離れない。

五十嵐くんは本当に、まりんちゃんのことを好きになってしまったのだろうか。


『やだって言えないみたいですよ?ほら、彼、優しいから』


五十嵐くんのことを、全てわかっているような口ぶりだった。

胸が痛くてたまらない。


(・・・信じたくないけど・・・)


金曜の夜、彼は好きだと言ってくれた。

雨に濡れながら送ってくれて、そしてキスをしてくれた、あの日のことを思い出す。


(あれが、全部なかったことになってしまうの・・・?)


私を「好き」って言ってくれた。

そして私も、「好き」って言おうと思っていたのに。

その言葉は、もう口に出してはいけなくなった。


もし、私の想いに彼が応えてくれたとしても。

さっきの写真が世間にさらされ、彼も私もそして会社も、全てが一気に落ちていく。


(・・・もう、どうにもできないじゃないか・・・)


叶いそうになった夢が、あっという間に姿を消した。

悔しさと悲しさで、涙が少しこぼれてしまった。

目の前が、暗くなるような眩暈に耐えて、私はその涙をぐっと強く拭きとった。










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