リアルな恋は落ち着かない
(・・・あれ、ここ・・・)


ぼんやりと瞼を開けると、無機質な白い天井が見えた。

細長い黄色がかった蛍光灯。

ふっと視線を動かすと、スーツ姿の男性の、後ろ姿が目に入る。


(・・・五十嵐くん・・・?)


寝ぼけまなこで、咄嗟にそんなことを思い、ゆっくり起き上がろうとする。

するとスーツの男性は、くるりとこちらを振り向いた。

「あっ・・・急に起きないで」

数メートル向こうの距離から、心配顔でこちらに近づく。

私はほっとしたのと残念な気持ちで、向かってくる男性の名を口にした。

「阿部課長・・・」

「大丈夫?もうしばらくゆっくり休んで」

肘を付き、起こそうとした上体を、課長はそっと横に戻した。

「気分悪くなるといけないから、もう少し横になっててね」

「・・・はい・・・あの、私・・・」

「ああ。朝、急に倒れたんだよ。覚えてない?」


(倒れた・・・)


「エレベーターホールのところで、急に倒れこんだんだ。ちょうどオレが通りがかって、近くにいた宗田さんと、一緒にキミを運んだんだよ」

「美瑠久ちゃんと・・・」


(あっ・・・そういえば)


会社に着いてエレベーターを待っていたら、美瑠久ちゃんに声をかけられたんだ。

それで体調を心配してくれて・・・。


(五十嵐くんの姿が見えて、私は咄嗟に階段で行こうとしたんだ・・・)


「思い出した?」

「はい・・・少し」
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