リアルな恋は落ち着かない
大きく鳴る心臓を抑え、なんとか2階の自販機に辿り着いた私は、ミルクたっぷりのカフェラテを買うと、近くにある長椅子に座った。


(課長、なんでわかったんだろう・・・)


ハンカチの次に渡された、可愛らしい包みを開ける。

半透明の包みの中は、中身がほぼ見えていたけど、実際に見るとやっぱりそうだとその絵の柄を確認する。

かわいらしいうさぎ柄の缶。中にはクッキーが入っていた。


(私は『清楚なお嬢系』という設定に加え、話しかけにくさもほしいから、『いかにもかわいい』っていうものは持たないようにしているんだけど・・・)


私は秘かにうさぎが好きだ。

けれど、自分のキャラ設定に合わせ、上質でシンプルでかつ可愛くてもオトナっぽいデザインのものを身につけるよう心掛けている。

もちろん、デスク周りの小物も然り。

動物モチーフのものなどは、ひとつも置いていないはずなのに。


(・・・あっ)


そういえば。

いつだったか、向坂部長が娘さんにせがまれて飼いはじめたといううさぎの写真を見せてくれたとき、「かわいい」「飼ってみたい」って、思わず言ってしまったっけ。


(あれを聞いて、覚えていてくれたのかな・・・)


胸の奥が、甘い香りに包まれた。
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