リアルな恋は落ち着かない
私、橘内優里菜(たちばなゆりな)は、年齢イコール彼氏なしの、26歳オタク女子。

オタクと名を語るには、ディープさが足りていない気がするけれど、世間一般から見たら、多分オタクだと思う。

そのはじまりは、遡ること16年前。

小学校高学年に、上がったときのことだった。

私は、兄の正輝(まさき)が好きだった、アニメのキャラクターに恋をした。

兄は主人公のかわいい女の子が好きだったけど、私はその子が好きな男の子・・・陸斗(りくと)くんが好きだった。

そこから、他のアニメや漫画にも興味を持ち出して、二次元の世界にどっぷりはまった。

漫画に限らずゲームも好きで、最近はもっぱら乙女ゲームに心酔している。


(そう。彼氏は乙女ゲームの光之助で十分なの・・・)


今私がはまっているのは、「大正純情恋物語」という大正時代が舞台の乙女ゲーム。

光之助(こうのすけ)は、そのゲームの登場人物で、プレイヤーが恋人に選べるキャラクターの一人なのだ。

剣道の達人で、祖父が作った道場を父と共に支えている。

冷静沈着ながら、友情に厚く、ゲーム上では幼なじみの彼女・・・私、「ゆりな」にとても優しいのだ。

白い胴着に紺の袴が似合ってとてもかっこいい。

あっさりとしたキレイな顔立ちなのだけど、長めの前髪をかきあげれば、かつて友達を守って負った深い傷跡がある。

それを隠すためもあって、光之助は額にいつも白い鉢巻きを巻いているのだ。


(でも、私の前では時々取ってくれるんだ)


ウフフ、と私は心の中でニンマリ笑う。

二次元だろうがなんだろうが、今の彼氏は光之助なのだ。
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