リアルな恋は落ち着かない
課長に続き、五十嵐くんがこんなにすぐに登場するとは。

私は後ずさったまま、彼を見上げて固まった。


(ど、どうしよう!なんか、えっと・・・な、なにを言えば・・・)


「あ、お、おはよう・・・」

とりあえずの挨拶をした。


(って、それだけじゃなくって!ちゃんと、金曜日のお礼をしないと・・・)


動揺しまくりの頭の中、思考を必死にフル回転。

そしてお礼の言葉を口にしようと、思考がたどり着いた直前に、五十嵐くんから先に私に言葉をかけてくれた。

「大丈夫ですか、体調」

「えっ!あ、う、うん・・・あ・・・その・・・ごめんなさい、いろいろ、迷惑をかけたみたいで・・・」

しどろもどろに言う私。

五十嵐くんは表情を変えずに「いえ」と短く返事した。

「それは別にいいんですけど」

見下ろされる切れ長の目。

私はとてもドキドキとして、視線をふらふら泳がせた。

「不倫は、どうかと思います」


(・・・えっ!)


「深みにはまらないうちに、止めた方がいいですよ」

そこまで言うと、五十嵐くんは「じゃあ」とその場を立ち去った。

私は言われたセリフに驚いて、その場に立ち尽くしてしまった。


(ふ、不倫!?)


不倫て・・・不倫だよね!?


(ま、まさか・・・!)


予期していない言葉だった。

追いかけて、すぐにでも「違う!」と否定するべき事柄だろうが、あまりのショックで私は一歩も動けない。


(不倫って・・・まさか、五十嵐くんの目にそんな風に映っていたなんて・・・)


金曜日、どんな状況だったか私は覚えていないけど。

私と課長は、そんないかがわしい雰囲気を醸し出していたのだろうか。
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