窓の外は晴れ





A社の社長と本田が帰った後、佐々木はB社の社長に連れていかれた
富田と二人になった部屋、私達はただ、座っていた




富「何を考えている?」



美「…何も考えてないよ」



富「嘘つけ…」



美「うん、嘘…」



富「言ってごらん?」



美「私、もう裕太に会えないんだって」



富「…ごめん。力になれなくて」



美「ううん、全部私が悪いの。
あの時だって今だって…芸能界なんて捨てて、裕太を取る事が出来なかった。………何故?」





私は、私に訊いた。

何度訊いたって、答えが返ってくる事も無ければ、答えが分かる事も無かった。





美「…置いてきたものや、手放してきたものを思い出さない方がいい。後悔するから……」



富「……」



美「…戻れるものなら取りに戻りたい……。」



富「…美織を待っているファンを忘れるなよ…。
こんな事になって、芸能界を続けられるのなんて正直、奇跡だ…」



美「解雇のほうがマシだよ…
殺人を犯して、生きる事が償い。って終身刑をくらった囚人の気持ちってこんなのかな?
…いっそ殺してくれた方が楽だよね。一生その罪を背負いながら苦しみながら生きていくなんて」



富「それだけの事をした罪だよ」



美「…なら、芸能界で生かされ続ける私には、ピッタリの罰だね…」




ーーーーーーー





円衣裕太殺人未遂事件は、何ヶ月にも渡り前代未聞として報道され続けた。

皮肉な事にも犯人の女性は、精神が不安定と診断された為、罪に問われる事は無かった…。



円衣裕太の退院から1ヶ月後
再び世間を騒然とさせる事件が起きた

それは【円衣裕太の芸能界引退】だったーーー

ファンの嘆く声を交わし、円衣裕太は消息不明。

報道陣は血眼になって探したが見つからず、円衣裕太は世間から完全に姿を消したのだった




それはあまりにも、突然の事だった



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