迷走女に激辛プロポーズ
ウンウン唸っていると、ポコンと音がし、頭を何かで叩かれる。
見ると怖い顔をした佑都が丸めた書類を握り、見下ろしていた。

下斜め四十五度……この角度の眺めも、なかなかのものだ! などと感心している場合ではないようだ。お怒りのようだ。

「あっ、お帰りなさい」とニヘラと笑い、即座に口を開く。

「ハイ、竜崎課長から、お返事下さいとのことです。以上報告終了」
「お前、なに誤魔化しているんだ。真面目に仕事しろ!」

フン、メドゥーサ清香の登場まで、ちゃんと仕事していたわよ!

反論したいのはやまやだが、これ以上コヤツを怒らせ、説教を食らうのも利に合わぬ、だから、グッと我慢し、ポーカーフェイスを貼り付け「すみません」と謝っておく。

それから、そうだそうだと思い出し、佑都が席に着いたのを見計らい、例の如く椅子ごと彼に近付き言う。

「あのね、今日、女子会に行くことになった。夕飯一人で食べてね」

報告終了、と床を蹴り、自席に戻ろうとしたのに椅子のキャスターが回らない。見ると佑都が椅子の背を握っていた。

ん? 何か? 首を傾げると寒々とした眼差しと共に彼がクイクイと人差し指を曲げ、来いと合図をする。
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