迷走女に激辛プロポーズ
佑都の……いつも自信に溢れ飄々とした彼の……あの驚きに満ちた顔は生涯忘れないだろう。

私は大きい方のリングを手に取り、唖然とする彼の右手薬指にそれを嵌めた。
直しが必要だと思っていたのに、予想外にピッタリで驚いた。

佑都は指に輝くプラチナの指輪を、呆然と見つめたまま、微動だにしない。

コラコラ、次は私の番でしょう、と堪り兼ね、右手を差し出し彼の目の前でヒラヒラ揺らして見せる。

彼は、ああ、そうか、と夢から覚めたように何度か瞬きをし、指輪を取り出すと、私の手を取り右手の薬指に嵌め、ポツリと呟くように言う。

「お前って本当……最高にイケてるイイ女だな」

彼の美しい指が愛おし気に嵌めたばかりの指輪をひと撫でする。
そして、その上に口づけを一つ落とす。

「こっちの指輪は改めて俺が用意する」

佑都は私の左手を取ると、約束というようにその指にもキスをした。

「うん」と頷くと、それが合図のように彼は私の腰をグッと引き寄せ、二人の距離をなくす。

目を閉じると、顔と顔の距離がなくなる。
彼の唇がソッ私の唇に触れる。

「楓、愛している。ずっと一緒だ」

口伝えするかのように唇の上で彼が囁く。
返事は彼の唇に飲み込まれる。

『よかったわね』柔らかな声と共にマダム煌の優しい微笑みが浮かぶ。
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