迷走女に激辛プロポーズ
第二章 公開恋愛でいいんじゃない?
海外事業部は、帝本社ビル八階にあり、オフィス内は課ごとに三つの島に分かれている。

◇白鳥佑都課長率いる、広報宣伝課。
◇竜崎清香課長率いる、経営企画課。
◇矢崎恭吾課長率いる、ITシステム戦略課。

それぞれの課長に事務アシスタント一名、部下八名の十人体制。

その三つの課を統括するのは、若干四十六歳の部長、榊竜平。『黒仏(くろぼとけ)』と呼ばれている見掛けは仏のように柔和な人だが、一旦ワーク・スイッチが入ると鬼化する恐ろしい人だ。

この四人、仕事はできるが一癖も二癖もある変人たちで、事務アシスタント泣かせの上司たちだ。

今週は榊部長と矢崎課長がアメリカ出張でいないから、かなり所内は平和だ。

私の席は、スタンド式に並んだデスクの雛壇に佑都と並んで在る。

昨夜ハタと気付いたことがあり、フェイク 書類片手に隣席へ椅子ごと移動する。
途端にあちらこちらから視線が向けられる。コヤツの熱烈ファンたちだ。だが、白鳥課長付き事務アシスタントの私だと分かると、何事も無かったかのように仕事に戻る。

どうやら私は彼女たちに“ライバル”と思われていないらしい。
これ幸いと書類を目隠し代わりに、更に佑都に近付き小声で囁く。
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