迷走女に激辛プロポーズ
「あのね、付き合っている事バレないようにしてね。特に社内の人には」

怪訝な顔で佑都が問う。

「どうしてだ?」
「迫害されるから」
「フーン」

表面、和気藹々としている佑都ファンクラブだが、その実、一部熱狂的なファンたちが、ドロドロと嫉妬渦巻く愛憎劇を主役の佑都抜きで繰り広げている。他人事で見ている分には昼メロより面白いが、その渦に巻き込まれるのは絶対に御免だ。

「大丈夫、何があっても楓のことは守るから」

耳元に寄せた佑都の唇が、耳たぶに微かに触れる。

なっ何だ! 身を引き、慌てて距離を取る。
ビックリ眼で佑都を見れば、奴が優しく目尻を下げる。

クールで無表情に見える塩系顔の微笑み、それはメガトン級の破壊力を持つ。

天然記念物並みのこの顔を初めて見た時、ギャップの威力に脅威した。あれから何度も見ているが、未だ慣れず、見るたびにドギマギする。

全く! 心臓に悪い生き物だ。

「何か有ってからじゃ遅いの!」

フンと鼻を鳴らし、動揺を追い出す。

「ある前の防衛。お分かり?」

ヒソヒソと書類の陰で対戦していると、デスクを挟んだ斜め前から、「白鳥課長」とハスキーでスウィートな声が突然聞こえる。途端に静まり返る所内。
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