あなたとホワイトウェディングを夢みて

 予想より美味しい朝食に郁未の箸は進む。『美味い』と声を出す度に留美はほんのり頬をピンクに染める。新鮮な留美の反応に郁未の箸が一瞬止まる。

「お代わりありますから」

 男性の食事の量を心得ている留美は、自分のより郁未の皿に多く盛っていた。焼き魚は郁未の方が大きいし、卵焼きも数が多めだ。
 会社では高慢な女だと蔑んでばかりいたのに、温かな待遇を受けた事に罪悪感さえ感じ、食べる手を止め留美に頭を下げた。

「昨夜は迷惑をかけた。すまなかった」
「謝罪は昨夜だけですか?」

 相変わらずの留美の厭味な反応に、つい郁未もいつもの口調に戻りそうになった。
 けれど、迷惑をかけたのは事実として、今は留美と険悪になりたくないと頭を下げた。
 すると、食べかけていた留美も茶碗と箸を手元に置き、郁未にニッコリ微笑みかける。

「専務は具合悪そうでしたから。体調不良の人を追い返す事はしません」

 向けられる笑顔が天使の微笑みに見えた郁未は、『そんなまさか』と首を横に振る。

「困った人がいれば相手が誰であれ手助けするのが我が家の教えなんです。気にしないで下さい」

 気にするなと言われても、今の郁未には無理だ。自宅とは雲泥の差の狭い部屋、直に座る畳の間に粗末なテーブル、高級な食器でもなければ、安物素材の食材の朝食。
 どれもこれも郁未とは縁のないものばかり。なのに、それが心温まりもっとここに居たいと思わせる。
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