あなたとホワイトウェディングを夢みて
「昨夜は微熱があったので、朝は和食が良いかと作ってみました。味が合わないかも知れませんがどうぞ」
微熱と言われて聡のメールを思い出し、留美に昨夜の様子を尋ねた。
「え、いえ。ワインで少し火照りましたけど、アルコールが抜けたら何ともありませんでしたけど」
媚薬入りのワインを飲んで平気なはずはないと、もう一度メールを確認しようと上着の内ポケットから携帯電話を取り出す。すると、新着メールが届いている事に気付いた郁未は内容をチェックする。
そこには『昨夜は燃えただろう? けど、安心しろ。媚薬なんてのは嘘だ』と、信じられない内容が書かれていた。
媚薬など最初からワインに入ってなかったのだ。その気にさせる為の聡の狂言なのだと、今更真実を知らされても手遅れだ。
留美の部屋で一夜を明かしてしまったのだ。結果として何もなかったが……。
(媚薬でなかったら、昨夜の火照りや気怠さは何だったんだ?)
「仕事のメールですか? あんまり根を詰めると、また具合悪くしますよ」
「あ、いや。大丈夫だ」
結局は留美との間では何も起こらず、ただ、郁未の醜態を晒しただけに終わった。
テーブルの前に腰を下ろした郁未は、珍しい朝食をジッと眺めていた。
「毒は入っていませんから、どうぞ」
「あ、ああ。いただきます」
郁未の真正面に座る留美はピンクのエプロンを外す。会社で見かける服装に化粧もし終えた留美からは仕事オーラが漂う。目の前には温かな家庭料理が並ぶのに。この違和感が郁未の心を落ち着かせなくする。