あなたとホワイトウェディングを夢みて
「あれは単なる親友を交えての食事でした」
「それでも彼は仕事上の付き合いもあり大事なディナーだった。なのに君は客人を残し帰宅した。俺は恥をかいたし相手にも失礼な態度だった」
確かに客人を置いて帰宅したのは間違いだったかも知れない。
けれど、人前でお姫様抱っこされたりキスされたり十分に恥ずかしい思いをさせられた。しかも、郁未の友人の前ではお姫様抱っこの体勢から床に落とされたのだ。
こんな屈辱的な扱いを簡単には許せないし、謝罪して責任を取って欲しいのはこちらの方だと留美の気に障る。それでも、アパートを訪れた郁未に対して大人の対応をした。
なのに何故、郁未に突然責任問題を問われなければならないのか、留美には不可解極まりない。もし責任を問うので有れば『仕事の責任は仕事で返します』と答えるまで。
「ディナーはディナーで返して貰う」
「ご友人を交えてのディナーですか?」
「今夜、君のアパートまで迎えに行く。あのドレスを着て待っていろ」
やはり相手は専務だ。伊達に役職に就いていない。その有無をも言わせない、郁未の鋭い目つきに留美は圧倒され一瞬怯みそうになる。
留美の表情が強張るのを見た郁未はフッと笑みを浮かべ、留美の前へとやって来る。そして、資料を留美に突き出し握らせた。
資料を受け取った留美は軽く会釈をし、部屋から出て行こうとドアノブを掴んだ。すると、背後から覆い被さるようにドアへ手を着いた郁未が、留美の耳許へ顔を寄せて念押しする。
「今夜、忘れるなよ」