あなたとホワイトウェディングを夢みて
ドスが利いた声なのに背筋がゾクゾクッとし、頭の芯まで響く留美。
けれど必死に抗う留美は、郁未の存在など恐れるに足りないと平静を装い部屋から出て行った。
廊下に出た留美は、胸の鼓動は破裂寸前。まだ郁未の声が耳に残っている。
そして、顔を寄せられた時に感じた郁未の吐息が胸を更に高鳴らせる。こんな状態でまたあのドレスを着れば、郁未のどんな行動も許してしまいそうで自分が怖い。
頬を赤らめた留美が大きく深呼吸すると自分の部署へと戻って行った。
――そして、郁未の迎えを待つ夜。
いつもなら仕事帰りに惣菜屋にでも寄るところだが、今日は郁未とディナーの約束がある。仕方なく真っ直ぐ帰宅した。
茶の間に入るなり堅苦しい服を脱いだ留美だが、ドレスには手が伸びず、先ずは強張る頬をリラックスさせようと洗面所へと向かう。
「ディナーかと思うと憂鬱だわ」
いったん会社を出てしまうと傲慢で冷徹な郁未が豹変する。傲慢なのは相変わらずだが、急に男の顔に変貌し近付き過ぎてはドキドキさせられる。
「冷たいシャワーでも浴びて頭を冷やそうかしら……」
洗面所で下着を脱いだ留美は折り戸を開けて浴室へと入って行く。こぢんまりとした、洗い場の狭い浴室。トイレと別々だったのが唯一の救いだ。
今日はこの後郁未が迎えにやって来る。ゆっくり浴槽に浸かっている時間はない。シャワーだけで我慢する留美だが、ここ数日、郁未との現実離れした時間を過ごした光景が脳裏に浮かび、身体の奥から熱が溢れてくると、冷水を浴びれば十分だとも思える。