あなたとホワイトウェディングを夢みて

 留美のジャージ姿が異様にも似合っていると、郁未は留美から視線が外せない。しかし、今日の留美は病人で介抱が必要でベッドの相手ではない。

「顔色がまだ良くない」
「寝ていたら治りますから。薬も貰っているので」

 ペコッと頭を下げると、留美は台所へ行く。
 覚束ない足取りで台所に立とうとする留美のそばへ駆け寄った郁未が、後ろから留美の両肩を掴み支える。

「大人しく寝ているんだ。ここは俺がやるから」
「専務に迷惑はかけられないわ。お茶でも」

 食器乾燥機に伏せて置いていた急須を取り出そうとした留美の手を掴み、急須から手を離させた。

「茶なら俺が淹れる。兎に角、大人しくしてくれ」

 世話しなければならない相手に世話をして貰っては、郁未は何の為にここにいるのか。自分が不甲斐ない男だと思われたくなく、掴んだ留美の肩を押しながら茶の間の方へと連れて行く。
 そして、テーブルの前までやって来ると留美の肩を押して座らせる。

「茶は俺が運んでくる。ここで待ってろ」

 とは言うものの、他人の家の勝手など分からないだろうし、そもそも自宅や会社で自分が飲むお茶を淹れた経験があるのだろうかと、留美は困惑しながらも郁未の優しさに頬が緩む。
 そして、留美が台所を眺めていると、慣れない手付きで茶筒から茶葉を急須へ入れる必死な顔した郁未が面白くて、ついついずっと眺めていた。
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