あなたとホワイトウェディングを夢みて
敷地から留美を乗せたタクシーが出ていくと、郁未はそれ以上は追えずその場に座り込んだ。両手で頭を抱きしめながら呻き声を上げてしまう。すると、そこへ、携帯電話の着信音が流れてくる。その音楽を聴くだけで郁未は腹立たしく感じると、上着の胸ポケットに入れていた電話を取りだし通話を拒否した。
しかし、直後にすぐ着信音が鳴り出し、郁未は眉を細めながら通話ボタンを押す。腰を下ろしたままの郁未だが、タクシーの姿が見えなくなると大きな溜め息を吐く。
「おい、拒否るなよ。それに、いきなり溜め息なんて止めろよな」
電話の相手は聡だ。
郁未の態度の悪さに聡も悪態をつく。
「用があるなら言え、聡」
「留美ちゃんの事だ」
聡の口からその言葉が出ると郁未は腸が煮えくり返りそうになる。
そしてタクシーも見えなくなり、郁未は腰を上げるとトボトボとエレベーターホールへと向かう。
「一応、念の為に誤解のないように言っておくが。俺は、うっかり間違ってお前のマンションに電話したんだ。そしたら留美ちゃんが居ただろう。そりゃあ驚くさ」
言い訳を聞く気分ではない郁未は、エレベーター前までやって来たものの、扉が開くのを待つ時間に苛つき再び非常階段から上へと上がって行く。誰もいない階段、コツコツと郁未の歩く足音だけが妙に悲しく聞こえてくる。
「元気のない声だったからさ、昼飯食いに誘ったんだ」
「それで留美に何を食べさせたんだ?」
体調を崩していた留美が何処へ着いて行ったのか気になっていると、聡がとんでもない事を言い始めた。