あなたとホワイトウェディングを夢みて
「兎に角、今度から玄関には鍵をかけてくれ。そんな可愛い姿、危な過ぎる」
初めて郁未に女扱いされた気がした留美は、驚きと戸惑いとで少し動揺する。それに、『可愛い』などと、郁未の口から出たのが信じられなくて、頭の中がパニックを起こしかける。
「玄関の鍵は、聡さんから専務がここへ向かっていると電話が入ったから」
留美が玄関の鍵の説明をするが、留美の口から聡の名前を聞きたくない郁未はどうしても嫉妬に駆られてしまう。すると、一気に頭に血が上り『携帯電話を出せ』と言って手を差し出した。
郁未の迫力に気圧された留美が携帯電話を渡すと、二つ折りの携帯電話を留美の目の前で逆方向へと折ってしまった。
それはものの見事に、バキッと鈍い音を立てながら、無残にも携帯電話が真っ二つに折れた。
電話は郁未の手から離れると、床へと舞い散るように落ちていった。そのあまりにも衝撃的な光景に留美は目を丸くして言葉にならない。
「携帯電話は弁償する」
そう言う問題ではない。人様の物を壊すなど言語道断な行為の為に、折角、良い雰囲気になりつつあった二人の関係にまで水を差してしまう事態に。
しかし、留美はそれ以上に、電話を壊しておきながら偉そうな態度の郁未が癪に障る。
「人の電話をめちゃめちゃにしておいて、その態度は何?」
「だから弁償すると言ってるだろ」
いつもの傲慢な専務の姿に戻った郁未に腹を立てた留美は、キッと睨み付けると床から電話を拾い上げる。