あなたとホワイトウェディングを夢みて

「それでその好奇心は満足出来たのか?」

 リクライニングシートを後方へと下げると、狭い車内なのに郁未が脚を組む。まるでVIP席に座っているような、郁未の偉そうな態度を見て『随分とリラックスしているな』と聡が皮肉交じりに言う。
 すると目を細めた郁未は、横目でギロッと睨み付けながら言葉を返す。

「それで?」

 かなり語尾に力を込めて言う郁未。郁未が相当に苛立っていると感じ取った聡だが平然と説明を続ける。

「美味しくて精の付くもの食べたら元気が出るだろうって、駅前のステーキレストランへ連れて行ったんだ。そこはハーブを使ったメニューが多いから女性に人気あってさ。以前、お前も女を誘って行った、あの何ヶ月も予約でいっぱいの店だよ」
「……」

 郁未は留美の体調を思えば言葉に詰まる。
 その人気レストランは「ハーブ」と健康的な名前が付いた店だが、提供するメニューはステーキなど牛肉を焼いたものが殆どを占める。
 郁未は組んだ脚を下ろし、背もたれを起こし、後ろへ移動させたリクライニングシートを元へ戻すと、大きな溜め息を吐いて窓の外へ目をやった。

「ほら、体力ない時って、ニンニクたっぷりのステーキを食べれば、元気が出るってお前も言っていただろう」

 だが、留美の胃の状態は普通ではない。養生の為に自分のマンションへ留美を引き取ったのだ。しかし、聡はそんな事情を知らない。
 
「冗談抜きでステーキレストランへ連れて行ったのか?」

 まさか体調不良の留美がそんな店へ着いて行くはずがないと疑う郁未だが、二人が一緒に出かけたのを郁未は自身の目で確認している。
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