あなたとホワイトウェディングを夢みて
自分の顔面が熱く感じる。今、自分の顔を鏡に映し出して見る勇気はない。きっと、自分とは思えない程に情けない顔をしているだろう。
枕をギュッと抱き締めると、頬を擽る一本の髪の毛に気付く。顔を上げてその髪の毛を掴むと、その長いヒョロっとした髪の毛を掲げて眺めた。
「自分の髪くらい自分で始末しろよな」
漆黒で太くガッチリとした一本の髪。留美を思わせる真っ直ぐとしたもの。少しも曲がってはおらず芯の通った留美のようだ。
郁未はそんな髪の毛を愛しそうに見つめると、枕に頭を戻し髪の毛も枕へ落とした。
「嫌な女だ。どこまで俺に纏わりつく気なんだ……」
溜め息が漏れる。
瞼を閉じ枕の端っこを握り締めると、顔を枕に深く押し付けた。
するとそこで携帯電話から着信音が流れる。留美からでも聡からでもない、仕事用の着信音だ。何か問題でも起きたのかと、急いで起き上がり携帯電話を手に取る。ベッドに胡座を掻いて座ると通話ボタンを押した。
電話口から聞こえてくる声は自分の秘書だ。
「何事だ? 緊急事態でも起きたのか?」
「実は営業部長から取り急ぎ専務に報告があると連絡がありました」
翌日に営業部長らと企画会議を行う予定だったのを思い出した郁未は、それと関係あるのかと問うと、予想外の答えが返ってきた。
「会議に必要なデータのプログラムに欠陥が見つかったそうです。それが原因で会議に必要な数字が出せないらしく、今、情報処理課で急遽プログラムの修正をしていますが、明日の会議までには厳しいらしいです」
自社独自の分析を行う為のプログラムに欠陥が生じては、企画会議を行うことは出来ない。市場調査したものの肝心なデータが無いのでは話にならないと、郁未は情報処理課の状況を秘書に訊く。
しかし、何度も訊いても返ってくる答えは『明日は間に合わない』と言うもの。