あなたとホワイトウェディングを夢みて

「こんな時に誰だ?」

 付き合う女性に合わせた艶めかしい着信音を女性専用音楽に鳴り分け設定していた。その音を聞くといつもなら心浮かれるところだが、今は目前の目障りな留美にとても浮かれ気分にはなれない。
 誰からの電話なのかと着信画面を確認すると、郁未は眉を細め大きな溜め息を吐いた。
 何故か鳴り分け設定とは違う名前がそこにあった。しかも、今、郁未が一番相手をしたくないダークなヤツだ。
 郁未は思わず着信拒否しようかと思った。しかし、万が一、重要な知らせならばと、思い留まった郁未は渋々通話ボタンを押す。

「はい、郁未ですが」
「は~い、パパですよぉ」

 思わず郁未は電話を床へ投げつけようとした。
 しかし、なんとか理性を働かせ携帯電話を握りしめるだけに治めた。
 毎度の事ながら、我が親にして会社社長という立場で、呆れてしまう郁未は電源ボタンをブチッと切ってしまった。

「勤務時間中にふざけた事するな!」

 電話へ向かって怒鳴り声を上げた郁未はかなり息が上がり、怒りから目眩がしそうになる。

「なんて日なんだ……」

 そこへ着信音が鳴り響き、再び社長から電話が入る。
 暫く放置したが、しつこい呼び出し音に渋々通話ボタンを押す。

「何か用ですか?」

 仕事モードで返事をすると、父親である社長もそれらしい声で答える。

「実はお前に大事な話があるのだが、今夜、時間は空いているか?」

 今度は真面目な口調だ。しかし、突然に予定を組まれても、忙しい身の上の郁未は変更は難しい。

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