あなたとホワイトウェディングを夢みて
「残念ながら今夜は予定がありまして」
「どうせ女だろ。一晩くらい抱かなくても問題ないだろ」
図星なだけに言い返す言葉が見つからない。
しかし、ここで諦めるわけにもいかず咳払いをすると『それ以外に問題があるので』と言い訳した。
「実はお前に会わせたい女性がいる。問題は早急に解決されるべきものだろうな」
完全に仕事の話題ではないと察した郁未は顔面蒼白となる。明らかに、その女性は見合い相手だ。
これまでも思わせぶりな言葉を突きつけられたことはあるが、今回の様にハッキリと『会わせたい女性がいる』とは言わなかった。
今回は本気で見合いをさせようという魂胆なのだろう。そして、断れない雰囲気を作り出すに決まっていると、郁未はこの見合い話を壊す気満々だ。
「分かりました、今夜必ず時間を作ります。その時にでも話し合いましょう」
「そう構える必要はない。私が気に入っている子だ。当然息子のお前も気に入るに決まっている」
やはり見合い話の電話なのだと、郁未は頬を引きつらせた。
「さあ、それはどうでしょう。ともかく、今夜その話をしましょう」
父親の命令で縁談を決められては堪らない。
郁未は父親に対し、これまで結婚には否定的な会話しかしてこなかった。それを覆そうとする父親と今夜は全面対決だと意気込む。
まずは気持ちを落ち着かせる為にコーヒーを欲しく感じ、いったん自分のデスクへ戻った郁未は、机上の電話の内線ボタンを押して秘書にコーヒーを持ってくる様に指示した。