あなたとホワイトウェディングを夢みて
コーヒーを待つ間、郁未は机の引き出しを開けて、ハガキサイズの手帳を取り出した。レザー張りの手帳は、ダークブラウンの表紙がとても豪華で、専務が持つに相応しい重厚感ある手帳だ。その手帳を当てもなくただパラパラと捲っている。
郁未は『合わせたい女性』とは誰なのかを考えていた。
父親が気に入る娘なら面識のある女性の可能性が高い。或いは、本人との面識がなくとも、日頃から懇意にしている者の娘の可能性もある。どちらかと言えば後者の可能性が高そうだ。
取引相手の社長令嬢や遠縁の女性で年頃の娘がいるのか、郁未は瞼を閉じで思い悩む。
すると、秘書の声がドアの向こうから聞こえてくる。
「失礼します」
静かにドアを開け、秘書がコーヒーを運んでくる。郁未のデスク前まで軽やかな足取りでやって来るが、ビジネススーツの膝丈のミニスカートから伸びている、艶めかしい脚のラインについ郁未の目が向く。
濃紺のスーツだけに、色白の肌が余計に細くすらりと格好良く見える。
明らかに自分をよく見せる為の誘惑のスーツだ。だが、部下である秘書には絶対に手を出す事はしない。そこは弁えている郁未だ。
けれど、秘書も同じ女だ。郁未は質問をしてみた。
「もし私が女性に自分の父親に会って欲しいと頼めば、それは何を意味すると思う?」
突然プライベートな話を振られた秘書は頬をほんのり赤らめた。コーヒーカップをデスクの上に置くと、少し呼吸を整え姿勢を正してから答えた。
「結婚を意味するものではないでしょうか」
「女性は皆そう考えるものだろうか?」
「あら、専務の父親に会うのでしたらそれ以外何かありますの?」