あなたとホワイトウェディングを夢みて
留美が処女だろうと踏んでいた郁未だったが、ここまであからさまに処女と言わんばかりの態度を取るとは思わず、笑いが込み上げてくる。しかし、ここで笑っては留美に失礼だし、怒りを買ってはこの後の行為に影響するからと必死に笑いを堪えるが、それでもどうしても閉じる唇から声が漏れてしまう。
「ちょっと、専務?」
明らかに郁未に子供扱いされている。
たとえ郁未にはベッドを共にする女性が大勢いて、自分には誰一人としていなくても、ここまで侮辱される謂われはないと留美は腹立たしくなる。
「失礼だわ」
「ごめん、ごめん。君があまりにも素敵だからさ」
留美は自分が処女だという事実を恥じらうが、郁未にはそれが天からの贈り物のようでとても有り難く感じる。
世慣れた女性らは多くの男性を知っているし、おのずと夜の行為も慣れていく。すると彼女らとの夜は新鮮味が欠け情熱的な夜とはほど遠いものになる。そして、そこには愛情など存在しない。
「だけど、君が食事を優先させたいのであれば、俺は紳士だから食事が終わるまで待つつもりだよ」
有無を言わさず女を抱こうとする男の何処が紳士なのか。留美は唖然とするが、それでも郁未の誤解を解こうとせずに、ここに留まる自分が間違っていると分かっていながらそれが出来ない自分に驚く。
「さあ、スープを飲んで」
郁未に促され、留美は手元のスプーンをぎこちなく取る。微かに震える手で器からスープを掬い上げる。
「濃厚でクリーミーだろ? まるで留美のキスの味だ」
「な……何言うの」
料理を運ぶスタッフを横目に、郁未の言葉を遮ろうと身を乗り出した留美が頬を赤らめて諫める。しかし、留美の言葉など無視し更に郁未がセリフを続ける。
「絡み合うキスを思い出す甘さだ。体の中から蕩けそうだろ?」
「専務!」
「二人の時は『郁未』だろ?」
「ワインに酔ったの?」