あなたとホワイトウェディングを夢みて
 深紅のカーテンは閉ざされ、ダウンライト一つ照明の灯りは無く真っ暗な寝室。開けたドアからリビングの灯りが入り込み、辛うじて寝室の中央にあるクィーンサイズのベッドが目に入る。
 テーブルに料理を並べていたスタッフは、二人が寝室へ消えていくと手を止め部屋から出てしまった。リビングから完全に人の気配が無くなり、ドアの閉じられた音が聞こえてくると郁未はベッドに留美を下ろした。

「食事が途中なのよ」
「今からする事を考えたら食事は控えた方が賢明と思わないか?」

 それはこれから起こる郁未とのベッドでの行為。留美は頭の中では理解しているが心がまだ追いつかない。食事を終えるまでもう少しだけ待って欲しかった。
 ベッドに横たえさせられた留美は早くベッドから離れなければと気だけが焦り、シーツを握り締め力を入れて上半身を起こそうとするが肢体に力が入らず体を動かせない。
 すると、郁未がベッドに腰掛け留美の顔へと手を伸ばす。郁未の重さにベッドが軋み、その音とともに郁未の手が忍び寄る。薄暗い室内では郁未の体も掌も留美の瞳にはとても大きな影のように映る。近付く黒い影にビクッと体を震わせると、郁未の手に包み込まれるように優しく頭を撫でられた。

「怖くないよ、大丈夫だから」

 リビングから入り込む照明の灯りでは郁未の表情までははっきり読み取れない。けれど、会社で対峙する郁未とは想像できない程にセクシーな声だ。その声に不思議と留美の心からは不安感も恐れも無くなっていく。
 体を屈めた郁未の顔が留美の顔に近付いてくると、いよいよベッドでの行為が始まるのだと、今から起こる恥ずかしい行為が頭を過ると留美の心臓は破裂しそうになる。
 頭を撫でていた郁未の手はいつの間にか頬へと移動し、大きくて温かな掌が頬を包み込む。とても男らしい骨張った指が軽く触れる度に肌がピクリと反応する。世慣れた女性の反応が分からない留美は自分が処女なのを負い目に感じ、近付く郁未の体を押し退けようと胸を押す。
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