あなたとホワイトウェディングを夢みて
確かに、頷けるものがある。しかし、約一名を除いては。
郁未は、未だにソファで眠る留美を横目でチラリと睨み付ける。
一方、コーヒーを運んできた秘書は専務からの言葉を期待して、微笑みながらデスクの前から動かずにいたが……
「ああ、君、もういいよ。仕事に戻って」
いつも通りの仕事モードの口調に秘書はガッカリし専務室から出て行く。
郁未は端っから秘書は相手にしない。
それに、秘書だけではない。会社の女性とは交際するつもりも、一夜の為に誘惑する事もしない。
多少は、女性社員らが仕事に意欲を燃やしてくれるならと過剰サービスをする事はたまにある。今回のランチを女性だけ豪華なメニューにしたのもそうだ。それらは郁未にはちょっとしたお遊び感覚に過ぎない。
そして、ハッと思い出した様に携帯電話を取り出す。
急遽予定を変更した事を、今夜会う予定の女性へ連絡を入れなければと、アドレス帳から女性の名前を見つけると通話ボタンを押した。
「俺だ。悪いが今夜は会えなくなった」
郁未の素っ気ないセリフに、相手の女性が『どう言う事よ?』とかなり怒り気味の口調で言い返す。その声の大きさに、郁未は思わず電話を少し耳から離してしまった。
「大事な仕事が入ったんだ。この埋め合わせは後日する」
まるでビジネストークをする様に話す。しかし、電話の女性は郁未の浮気を疑い『他の女と会うんでしょ?』と怒鳴る。
面倒な女に感じた郁未は、もうこの女と会うことはないと思えた。