あなたとホワイトウェディングを夢みて
 チュンチュン―― 翌朝、小鳥のさえずる声が聞こえる。耳許が擽ったく感じ、カーテンの隙間から入り込む日差しの強さに朝を迎えたのだと分かる。
 昨日は大変な一日だったように記憶する留美だが、自分がどんな一日を過ごしたのかはまだ頭が半分寝惚けている所為か思い出せない。

「今、何時なの?」

 いつもより寝心地の良い布団にうつ伏せになり、滑らかな生地が頬に触れると肌触りの良さに顔を埋める。あまりの心地良さに大きな枕を抱きしめ『う~~』と唸り声を上げる。
 昨夜は郁未がアパートまで迎えに来て、それから一緒に出かけ――その後の自分の行動を思い返す。

(夕べ、私、どうしたっけ?)

 いつものベッドの感触とは雲泥の差だと布団カバーの品質の差にハッとし、ここは自宅アパートではなく高級ホテルのスウィートルームだと思い出す。
 うつ伏せ体勢からガバッと勢いよく体を起こした留美が座り込むと、昨夜訪れたホテルの寝室なのか目を見開いて室内を見渡した。
 目の前に広がる景色はやはり自宅のソレとは全く違う。クィーンサイズのベッドの南面には豪華な刺繍が施された深紅のカーテンが窓を覆っている。厚地の遮光カーテンの隙間から朝日が入り込みベッド足下のカウチソファまで差し込んでいる。

(カウチソファのアレってスーツ?)

 男物のスーツの上着やシャツなどが無造作に置かれていて、その横には女物のスーツもある。

(女物って誰の?)

 何故ここに女物のスーツが脱ぎ捨てられているのか、自分の目で確認しようと身を乗り出しカウチソファの服を眺めていると、自分の背中や腕あたりが身軽で寒気さえ感じてくる。
 昨夜は服を着たまま眠ったと思い出した留美だが、今の自分の体は服を身につけている割にはかなり軽い。もしやと嫌な予感がし、自分の体へと視線を移すと下着姿の自分が目に入る。

(まさか、本当にやっちゃったの?! でも……)

 知らぬ間に郁未に抱かれたのだろうかと思い悩む留美だが、自分が下着を身につけている事実に昨夜は何もなかったはずだと確信する。

「う……ん、るみ……」
「え?」

 掛け布団を少し下へ下げて声の主を確認すると、そこにはきれいな肌を露出した郁未が仰向けになって眠っていた。寝顔も凜々しくて素敵だと見つめていると留美は郁未の顔から目が離せない。
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