あなたとホワイトウェディングを夢みて
 男性と同じベッドで朝を迎える、しかも、その相手の男性は夫でも恋人でもなく親しい親友でも家族でもない人。なのに、そこにいるのが当たり前のように横たわって眠っている。

(裸?)

 郁未の姿が気になり留美は掛け布団を掴んでは少し持ち上げ、中を覗き込み郁未が全裸なのかどうかをチェックした。郁未の腰あたりに黒っぽい下着を確認できホッと胸を撫で下ろす。スーツを脱がされたが指一本触れられていないと確信した。
 仕事のミスを償えと強引にホテルへ連れ込まれたが、無理矢理抱かれはしなかった。これまで堕落した生活を送って来た郁未の人間性を疑うことばかりだったが、郁未と関わるようになってからはこれまで知らなかった郁未の人柄に触れることが出来たように思う。
 冷酷そうだけど予想以上におせっかいで面倒見が良い。短気に見えるが意外と辛抱強い。本来ならば、恋人同士が泊まる高級ホテルのスウィートルームだ、二人が眠るのにゆったりしたサイズのベッドがあるのだから、一晩一緒に過ごす絶好のシチュエーションならばセックスしていても不思議ではない。
 だけど、郁未は手を出さなかった。処女の留美には分かる。体に異変を感じていないし、触られた感覚もない。プレイボーイと浮き名を流す郁未なのに、その実は想定外な誠実さを持つ魅力ある男性のように思える。

(噂は噂に過ぎないってことなのね……)

 郁未への感情を本人に知らせるのは面倒を引き起こすだけ。だけど恋愛経験のない留美は成就しないこの恋をどう扱えば良いのか分からない。
 郁未は到底本気ではないはずだ。今はただ自分の周りにいないタイプの女が珍しくてゲーム感覚で構っているだけ。きっと飽きれば郁未は離れて行く。

(そんなのイヤ……)
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