あなたとホワイトウェディングを夢みて
「分かった、今日で終わりだ」
いきなりの別れ話に、女性は涙声で懇願する。
「別れるなんて嫌よ。絶対に別れないわ」
女の言葉を無視した郁未は、電源ボタンを押し一方的に通話を終えた。
そして机上の電話の内線ボタンを押して秘書を呼び出した。
「はい、秘書課山本です」
「例の彼女に薔薇を送ってくれ。今日中に忘れない様に頼んだぞ」
「分かりました。すぐに手配致します」
郁未は親愛の情を示す時は自ら薔薇の花束を持参し直接渡す。しかし、関係を終わらせる時は秘書に指示を出し薔薇の花を送る。
これで何度目の薔薇の花束を指示されたことか、秘書は数え切れないほどの花束を手配していた。
「面倒な生き物だな」
かなり不機嫌な物言いで呟いていると、横からいきなり声が聞こえてくる。
「失礼ですが、今は女性とデートの打ち合わせより、こちらのデータの確認作業をして頂きたいのですが」
『これまでサボって居眠りしていたのはお前の方だろう』と怒鳴りたい郁未だが、留美はまだ眠気が取れていないのか、いつものつり上がった目をしていない。
寝ぼけ半分なのかと郁未が口を噤んでいると、留美がいきなり捲し立てた。