あなたとホワイトウェディングを夢みて
「今は勤務中なのに女性に夢中になるなんて、しかも薔薇の花束を秘書に命令するなんて。これが日常茶飯事だと思いたくもないけど、こんな女ったらし女の敵だわ」
プライベートに口を挟む権利などない留美に、何故そんなセリフを言われなければならないのか、無性に腹立つ郁未は怒りを抑え込むにも我慢も限界に達する。
しかし、相手は部下であり礼儀知らずな女だと思う事で、何とか怒りを静める。
すると、留美が再び高慢にも喋り出す。
「お忙しい様なので私はこれで持ち場に戻ります。データには問題はなさそうなので。もし、まあ……有り得ない事と存じますが、万が一、データに何かあれば情報処理課までご連絡下さい。では、これにて失礼します」
留美がソファから立ち上がると、郁未の方を向き、しっかり両手を重ねて深く頭を下げお辞儀をすると、郁未の顔を見る事なく専務室から出て行く。
呆気にとられた郁未は呆然となって、留美が部屋を出るまで眺めていた。
そして、廊下に出た留美が、ドアの前からエレベーターホールの方へ颯爽と突き進んで行く、ヒールの軽快な音が専務室の中まで聞こえてくる。
耳を澄ませていた郁未は「女狐め」と呟いていた。
一方、情報処理課では、課長と田中が心配のあまり仕事が手に付かず、オロオロしながら留美の戻りを待っていた。
「すいません、遅くなりました」
元気な声で留美が情報処理課へ戻ってくると、課長と田中が驚きの顔で留美の方をバッと振り向いた。