あなたとホワイトウェディングを夢みて
田舎の小島では滅多にお目にかかれない上物客だと直感した観光案内所の女性スタッフが数名、仕事の手を止めて競って郁未の周りに集まって来た。
「何をお聞きになりたいですか?」
「島の案内でしょうか?」
「お一人ですか?」
矢継ぎ早に飛んでくる、若いスタッフの質問を押し退けて、中年女性が頬を赤らめて「いらっしゃいませ」と挨拶する。独身女性なのか露骨な笑顔だ。
(留美は一度も俺にそんな顔はしなかったな……)
男の資産や地位に興味がない素振りをする留美の態度は気に入らなかった。これまで金に興味を示さない女はいないと決めつけていたが留美は違っていた。改めて自分の愛した女が素晴らしいと誇らしくなる。
「あの……お客様?」
しばし無言になった郁未にスタッフたちが困惑する。
「あ、失礼した。実はこの島の宿泊所について教えて欲しい」
宿泊所は勿論のこと、一番の目的である「ホワイトウェディング」のポスターの撮影場所も聞いた。
中年女性がパンフレットをカウンターの上に広げると、次々と若いスタッフたちが自慢げにホテルの素晴らしさを紹介し始め、ホワイトウェディングの撮影場所となるビーチの場所や当時の話題を競って話し始めた。
その節操のなさに早々に退散したいと感じた郁未は、パンフレットを貰うと急いで観光案内所から出て行く。
(まあ、普通の女の反応はあんなものだろうな……)
セレブとは如何にも無縁な連中だ。玉の輿に乗れなくとも、セレブの目に止まり愛人にでもなれば夢の世界へ足を踏み入れることができると、女たちの目を見れば一目瞭然だ。
以前の自分ならそんな女と戯れ時を楽しんでいたが、今は留美以外の女には興味を持てないし第一身体が反応しない。
(そうだ、留美を……)
パンフレットにある地図を頼りにホテルへ向かおうとしたが、目を疑うことにパンフレットには「クリスマスにオープン!」と大きな文字で印刷されていた。
「クリスマスだと?!」