あなたとホワイトウェディングを夢みて
郁未は自宅へと向かっていたが、いつも利用しているホテル側を通り過ぎようとした時、ホテルのラウンジを思い出し、気分転換しようと行き先を変更した。
ホテルの駐車場へ車を停めるとしばらくハンドルに顔を伏せて呼吸を整える。留美に会えず終いで少し気が苛立っている自分を静めようとした。
(このまま留美を探すのか? だが、留美の行きそうな場所を俺は知らない)
短い付き合いの二人だ。留美と一緒に出かけた記憶は殆どなく、留美の思い出の場所はもちろんのこと、二人の思い出の場所など二人で共有するものはなにもない。
なんと脆く危なっかしい関係なのだろうかと、顔を上げて天を見上げると大きな溜め息を吐く。
「こんな状況で留美の実家へ顔を出すなんて……無理だ。……留美、どこにいるんだ」
再びハンドルに顔を埋めると思いっきり拳でハンドルを叩く。
「痛いじゃないか」
ハンドルに八つ当たりしても状況は変らない。
ホテルのラウンジで気分転換するつもりで駐車場へ入ったものの、だんだんと気が滅入ってきた郁未はラウンジの気分ではなくなる。
しかし、何もせずには居られない。
何かで気を紛らせないと留美を追い求め日本中を彷徨い歩きそうだ。
「くそっ……結婚式の後、思い知らせてやる。俺の腕の中がどんなに心地よくて、離れがたい場所か教えてやる」
暴言を吐くことで高ぶる気持ちを何とか静め、車から降りて行った。
いつも行くホテルのラウンジ。いつもと同じ光景、適度な間隔で設置された円形テーブルに、高級スーツを身に纏う男性に妖艶な美女が寄り添い、照明を落とされムードあるラウンジから彼らの戯れる会話が聞こえてくる。以前なら怠惰した光景に流されるように美しい女性を求めた。日常から離れ、張り詰めた神経を癒やす為に世慣れた女性と過ごす時間が当たり前のように感じていた。
しかし、留美がそばにいないだけで心にぽっかりと穴が空き、豊満な肉体を持った男心を擽る美女を見てもそそられない。