あなたとホワイトウェディングを夢みて
淑女の中には厚化粧して胸の大きく開いた品のないドレスを着た女もいる。身体をくねらせ擦り寄る相手は上物スーツを着こなすビジネスマン。それも一介のサラリーマンではない。玉の輿狙いの女たちが群がるのは、資産家の跡継ぎばかり。
男自身ではなくその背景にあるものに心惹かれる女たちの獲物は、金と地位、権力を持ち合わせた男――
そんな女を利用し楽しむ男たち。
(一夜をともにして得るのは快楽のみ。そこには何も生まれない)
ラウンジの男たちを見ていると、まるで留美と恋愛関係になる前の自分の姿を見ているようで気が滅入る。さらに、ムード作りの為か、ロビーより一段落とされた照明に余計に気持ちが沈む。
ラウンジ奥にあるカウンターの一番端の席に座ると、郁未はドサッとテーブルに伏せて大きな溜め息を吐いた。
(俺はいったい何をしている? こんなところで酒を飲んでも留美は現れないのに)
判ってはいるが、留美の行き先の見当がつかない郁未はやるせない思いが募るだけ。郁未が握りしめた拳をカウンターに押し当て顔を上げると、バーテンダーが声をかける。
「いらっしゃいませ、澤田様。お飲み物は如何なさいますか?」
苛立つ郁未は「いつものロゼだ」と声を荒らげる。
いつもラウンジでは温厚な郁未だが、今日は随分荒れているとバーテンダーは目を丸くする。
「ロゼですか?」
ロゼは郁未がいつも女性と戯れる時に飲むアルコールだ。それを知っているバーテンダーが確認する。
これまでロゼは女性を楽しませる飲み物として注文していた。今日の郁未は一人、同伴の女性はいないが、それでも、留美の笑顔が脳裏を過ると、ロゼの淡いピンク色と留美の笑顔が重なり、勝手に口が動いていた。
「ああ、そうだ。ロゼが欲しいんだ」
「かしこまりました、澤田様」
バーテンダーが注文のロゼを差し出すと、グラスを受け取った郁未は一気飲みし、次にシャンパンを注文した。
「ドンペリのピンクを」
「ドン・ペリニヨン・ロゼですか? 申し訳ございません、こちらのバーではゴールドかプラチナのみとなっております」
留美にも味わって欲しいと思っているシャンパンだったが、扱っていないと言われ郁未の顔が曇る。