あなたとホワイトウェディングを夢みて
「戸田様、申し訳ありません」
「いや、迷惑をかけたね。それで、連れはいないのかい?」
「はい。本日はお一人でお見えになってまして。地酒をお薦めしたのですが、まさかこれほど酔われるとは思っていませんでしたから」
バーテンダーは聡に謝罪すると深く頭を下げた。
聡が来た時、既に郁未はカウンターに完全に酔い潰れてしまっていた。そこまで酒に飲まれた郁未を見たのは初めてだ。そこで、郁未の身に何かあったのかバーテンダーに訊いた。
すると、今日は一人でラウンジを訪れ、席に着くなり伏せてしまったと、郁未の来店時の様子をバーテンダーが説明する。
「悪かったね。こいつは俺が連れて帰るから」
安堵するバーテンダーの様子から、郁未はかなり彼を困らせたのだろうと想像がつく。
「郁未、帰るぞ」
「……ん? たぁれ……だ?」
悪酔いだけでなく、瞼が開かない郁未は半分眠りこけている状態だ。酒の匂いを撒き散らしながら何かを喋っているが呂律が回ってない。
「ゆ……み…………しゃ……ん……ひゃれ……は……ひるへ……」
「酔っ払いめ。ほら、帰るぞ」
「ひゅみ……ひく……ひくんひゃ……」
「何言っているのか判らん」
舌打ちすると、聡は郁未の腕を引っ張り上げ自分の肩に担いでラウンジから出て行く。
身体から力が抜けた酔っ払い男を運んだ経験がない聡は予想以上の重さに、かなり歯を食いしばり太ももに力が入る。大の男を運ぶのがこれほど重労働とも思わず、予想外の展開に聡は愚痴がこぼれる。
「起きろ! 起きて自分の足で歩け!」
駐車場に駐めている、目の覚めるようなスカイブルーの高級車まで苦労して運んだ聡だが、車のキーのロックを解除しなければ車のドアは開かない。
「落ちても知らんぞ。郁未、覚悟しろよ」
投げやりな言葉を吐き捨てると、郁未の身を車体に押し付け、ジャケットの内ポケットからキーを取り出し車の施錠を外した。何とかドアを開けて郁未を助手席へと座らせたが、酔いの回る郁未は自分の足さえもフットスペースへ動かすことができない。