あなたとホワイトウェディングを夢みて

「郁未だけど、何があったのか知らないけど、こんなに酔い潰れることって初めてでね」
「え……?」
「酒の匂いが充満しているだろう? 相当飲んでいるはずだよ」

 確かに、車内は高級車独特な匂いよりも郁未が吐く酒の臭いが漂っている。
 換気が必要と、聡は窓を少しだけ下げて外の新鮮な空気を取り入れると、「郁未のマンションへ向かっているからね」と、改めて行き先を留美に伝える。

「…………はい」

 辛うじて聞こえる程度の小声で留美が答える。
 助手席では酔い潰れる郁未が倒れたリクライニングシートに寝そべっている。自分の座席からもハッキリと郁未の様子が見て取れるが、留美はそんな郁未の姿を見ようとはせずに窓の外を眺めているだけだった。
 一方、郁未もまた、完全に眠っていてピクリと動かず、窓に身体を向けて横たわる。
 背中合わせの二人の姿が、聡はこの状況が今の二人の関係を物語っているように感じた。

「郁未をベッドへ運ぶのを手伝って貰いたいけど、良いよね?」
「……」

 泥酔する郁未を聡一人で運ぶのは至難の業。留美が手伝うのは当然のことだが、無反応の留美。
 郁未の惨状を知っても質問一つしないどころかそっぽを向く留美の態度に、相当二人の仲が拗れたのか喧嘩中なのか想像がつく。
 実に重苦しい空気の車内だ。郁未の酒臭い呼吸に、無言で窓の外を眺め続ける鬱々とした留美。静まり返ったこの状況から一刻も早く抜け出したい聡は車のスピードを少し上げた。
 そして、郁未のマンションへ到着し、駐車場の所定のスペースに車を停めると、聡はすぐにエンジンを切り車外へと出た。

「あの……」

 留美が何かを言いかけたが、それを無視した聡は助手席のドアを開けて郁未の頬を軽く手の平でペタペタと叩く。

「起きろ、郁未!」

 無反応な郁未の肩を掴んで揺り起こすが、「りゅみ」と相変わらずうわ言を言うだけで目を覚まさない。

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