あなたとホワイトウェディングを夢みて

「やれやれ、また担いで行くのか」

 車まで乗せたあの大変さをもう一度味わうのかと思うと大きな溜め息が出る。

「あの……手伝います」

 聡一人で動かすのは無謀過ぎると、留美が慌てて車から降りてきた。

「じゃ、コイツを見ててくれる? 管理人に車椅子が借りられるか聞いてくるから」
「だったら私が」
「いや、君は郁未といて」

 聡に言い切られ、留美は仕方なく助手席のドアの所へと行く。

「仕事……どうしたの?」

 ボソッとつぶやく留美の言葉は郁未を心配するかのような声だ。郁未を見つめるその瞳も、郁未を案じるもの。
 二人は相思相愛だと感じ取った聡はフッと笑みを零すと、管理人室のあるエントランスへと急いだ。管理人室に予備として配置されている車椅子が一台。それを借りた聡は駐車場へ戻って行く。
 駐車場へ車椅子を運んで来た聡だが、自分の車の少し手前で足が止まった。
 郁未は相変わらず眠ったままで助手席に横たわっているが、そんな郁未の顔を留美がハンカチらしきもので拭いている光景が目に入る。

(心配は要らなかったかな?)

 微笑ましい光景に聡はもう少しゆっくり戻るべきだったと思いながら、しばらく二人を眺めている。すると、聡の視線に気付いた留美が顔を真っ赤に染めながら、郁未から離れ背を向けた。

(……こんな初な反応を見せられたら郁未が落ちたのも納得かな。これまでの女とは雲泥の差だな)

 初々しい留美に苦笑すると、車椅子を郁未の隣につける。

「郁未を乗せるから車椅子を押さえててくれる?」
「は、はい!」

 聡と交代して車椅子の手押しハンドルのグリップを握った留美は、急いでブレーキのレバーを引く。そして、聡が郁未を動かしやすいように車椅子の向きを助手席へと向ける。

「重いな。……郁未、車椅子を持ってきてやったから、これに乗るんだぞ!」

 目を覚まさせようと大声で話しかけ、郁未の腕を引っ張りながら身体を起こし、自らの肩で支えながら郁未を車から引きずり出す。

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