あなたとホワイトウェディングを夢みて

「二人とも顔が怖いですよ」

 まだ、疑いの目で見る課長と田中。

「本当に仕事をしていたの?」
「まさか君、とんでもない失態犯して隠していないかい?」

 課長は仕事上のミスの隠ぺいを疑い、田中は専務を嫌うと言いながら留美がモーションをかけたのではないかと疑った。
 二人の疑り深い執拗な目を鬱陶しく感じた留美は、「ちょっとトイレへ」と逃げ出した。
 ますます持って怪しいと踏んだ田中が留美を追い掛けようとすると、そこへタイミング良く内線が鳴り響く。

「田中君、電話だよ」

 仕方なく留美を追うのを止めた田中は、自分のデスクへ戻り腰を下ろすと受話器を取った。
 面倒臭そうに電話に出た田中だが、相手の声を聞いた途端に背筋をシャンと伸ばし、何度もお辞儀をしながら「はい」と連呼する。
 その異常な態度に課長は何事かと田中を心配そうに見ている。

「はい、はい、判りました。すぐに行かせます」

 ただならぬ事態に陥った予感がした課長が、額から冷や汗を流し、田中に電話の相手を訊く。
 すると、田中が「専務からです!」と叫ぶ。
 電話が専務からと判ると、課長は顔面蒼白となり微動だにしなくなる。

「佐伯さん、呼んできます!」

 専務からの呼び出しがあったと、トイレまで駆け込んでいった田中に聞かされ、留美は用を足し終わると専務室へ直行する。

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