あなたとホワイトウェディングを夢みて
「留美?」
「どうしてこんなことができるの?」

 留美のお尻から太腿にかけて、郁未の筋肉質な脚と骨ばった膝を生々しく感じると、慌てて降りてベッドからも足を下ろす。
 しかし、それを許さない郁未は留美の腕を掴み、自分の足下に引きずり倒す。

「な、何するの?」
「逃げられないようにだ」

 膝から下だけベッドからぶらりと下がり、身体はしっかりベッドの真っ白なシーツの上に仰向けに横たえさせられた。両手首を掴まれた留美はベッドに抑え込まれ、顔を覆うように郁未が顔を覗き込む。

「俺がどれだけ探したか判っているのか?」
「今日は有給休暇を取っていたのよ。人事課で聞けば判ったことよ」

 郁未の怒りに満ちた鋭い瞳に見つめられ、とても熱くて留美は顔を背ける。

「社長以外にはその権利はないんだよな?」
「……」

 入社時の社員名簿作成の際、個人情報についての問いがあったのを思いだした。留美は社長以外に個人的な情報は開示しないにチェックを入れていた。

「……個人情報だから」
「ずいぶん徹底していると感心したよ。そのおかげで、連絡先も実家も調べるのに苦労したよ」

 散々留美に振り回されたこの二日間を思い返すと、想いの深さから握りしめる留美の手首に更に力が入る。

「い、痛いわ」
「痛いか?」
「……せ、専務」

 恋に翻弄されている自分とは正反対な、恋愛に冷淡な留美を見て怒りさえ覚えてしまう。
 それに婚約者なのに未だに肩書きで呼ばれることの苛立ち。今、ベッドに押し倒されているこんな状況でも平静さを感じる留美の唇を封じる。

「……んっ」

 力任せに口づける郁未の唇を必死になって抵抗を試みる留美だが、捉えられた唇は郁未のキスを許してしまう。

「だ……め……」

 抵抗も虚しく、甘いキスには抗えない。

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