あなたとホワイトウェディングを夢みて
頭の中では撥ねのけなければならないと判っていても、心の奥深くでは、愛しい郁未からの口づけはこの世の最高の果実と同じ、とても甘くてみずみずしくて一度味わえば永遠に欲しいと思わせてくれる。
激しくキスをされては優しく触れる唇。切なく噛まれる下唇から郁未の情熱がひしひしと伝わってくる。
掴まれていた手首から指はいつの間にか離れ、手の平が重ねられ指が愛おしく絡み合う。
「留美、探したんだ……会いたかった」
いつまで騙され続けるのだろうか。喉から手が出るほどに欲しい言葉を郁未が囁いたとしても、意味のない言葉だと理解する留美の心には響かない。
「その言葉をどう信じたらいいの?」
「嘘じゃない。昨日から姿を消したみたいにいなくなった君をずっと探していたんだ」
獲物であり賭けの対象の女、行動を監視する為に探していたのか。或いは、それはたんなる言葉の綾で、本当はホテルのラウンジで羽目を外して飲んでいただけでは。
だから、酔いが回って動けなくなった郁未は、聡に送らせていたのではないのか。
郁未の乱れた生活が走馬灯のように脳裏に浮かぶ。
「何故そこまでするの?」
「婚約者とは一日だって離れたくないものだろ?」
(周囲の者に偽りの婚約をバラされない為に?)
完全に疑心暗鬼となる留美は、郁未の言葉を素直に受け入れられない。
「あなたの言葉をどこまで信じたらいいの?」
この芝居を、賭けの演出を、すべてを終わらせるまで後どれくらい傷つけられれば良いのか。それに、何故、自分がその対象に選ばれたのか。
悩みは尽きないが、地味で生真面目な性格だから賭けの対象として相応しいと思われたのか、自ずと答えは出る。
「もう、やめて」
涙だけは流したくない。必死に堪える留美は、握りしめられる手の平をギュッと強く握り返した。
「瞳はやめてほしいとは言っていないよ」
絡む指の付け根から、お互いの熱が肌を通して伝わってくる。そしてその熱気は吐息からも瞳からも感じ取れる。
「留美、愛してる」