あなたとホワイトウェディングを夢みて
今回の原因が判明したところで、専務への言い訳にはならない。これは自分の管理不行き届きと言われればそれでお終いだ。確かに、自己管理を怠った事には違いない。
完成した時点でバックアップを取り、提出用のメディアも作成していれば何ら問題は無かった。
今更そんな事を考えても遅い。
午後、データ提出時に専務への謝罪は免れない。それまで気の重い時間を過ごすのも面倒だ。留美は早々にすべて解決したくて、プリントアウトした資料とデータを手に持ち専務室へと向かう。
一方、郁未はと言うと、朝っぱらから専務室を訪れた俊夫に、前日の話の続きを聞かされていた。
「ですから、その話はもう終わったじゃないですか!」
自分のデスクに座った郁未は、気の乗らない結婚話にウンザリし、椅子を回転させ窓の外の景色に目をやっていた。
ソッポを向く息子を相手に強情な父親の俊夫も負けていなく、ソファへドカッと深く腰かける。
「先方から朝一で連絡があったんだ。それで、今週末に顔合わせでもどうかとなってね」
「なにを勝手に話を進めているんですか?!」
「久しぶりに会う親友だ。楽しみだな」
怒り心頭の郁未が俊夫の方へ向き直って怒鳴るが、郁未の話など聞いていない俊夫はズケズケと喋り続ける。
「彼のお嬢さんが小さい頃に会っただけだが、実に聡明で奥さん似の可愛い子だ。両親の愛情を一身に受けて育っただけに豊かな心を持つお嬢さんだ。会えばきっとお前も気に入る」