あなたとホワイトウェディングを夢みて
どんな子でも幼い頃は可愛いものだ。それに親の愛情を一身に受ければワガママ娘と相場は決まっている。もしや、売れ残り娘を押し付けているのではないかと、郁未は妙な胸騒ぎがする。
「絶対に行きません。そんなに気に入ったのなら父さんが嫁に貰えばいい」
「あの時、お前も一緒に親友に会わせたと思うが。お前、覚えていないか?」
まったく郁未の話など聞く耳持たない俊夫は、親友の娘の話題をわざとらしく持ち出す。
「その手には乗りませんよ」
俊夫の口車に乗る気のない郁未は、断固としてこの縁談を壊そうと思案する。
するとそこへ、『トントン』と誰かが専務室のドアをノックした。
今の時間に約束はなかったと記憶する郁未だが、父親のくだらない話を終わらせるのに、この訪問者は好都合だ。
今の郁未には救世主と思える存在だ。
わざわざドアの所まで寄って行き、自らドアを開けて『どうぞ』と快く専務室へと引き入れる。
ところが『失礼します』と入って来たのは、郁未の天敵とも言える存在の留美だった。
「こんな時間に何している?! データの提出は午後からだろう!」
最悪な事に、この場面に一番居合わせたくない者を引き入れてしまったと、郁未は顔を引き攣らせてしまった。