あなたとホワイトウェディングを夢みて
そして翌朝の会社。
いつもより早めに出勤した留美は、朝一で専務へ提出するデータの複製準備をしていた。
専務から指摘を受けた箇所の修正は既に終わらせている。残るはメディアにデータを複製するだけだ。
その作業を誰にも邪魔されない様にと、用心に用心を重ねての早朝作業だ。
昨日、留美が自分のデスクに戻ってデータの確認をした時の事だった。自分が作成したプログラムが、いつの間にか誰かの手によって書き換えられていたのだ。それもあまりにもお粗末な内容で……
すべての作業を終えた今朝の留美は、コーヒーを片手にパソコン画面を眺めながら、見事な自分のプログラムに満足している。すると、横から課長が心配そうな顔をして話しかけて来た。
「佐伯君、専務の仕事の進み具合はどんなだね? どうも君は未熟な点があるようで、私も確認させてもらったが」
「確認って、何をどう確認したんですか?」
イヤな予感がし留美が尋ねると、課長は得意気に喋り始める。
「変な箇所を見つけたから、専務へ提出する前に私がプログラムの手直しをしていたよ。私が最終チェックしたから完璧のはずだよ」
お粗末な内容の原因が課長だったとは、呆れて物が言えない留美は唖然とする。
しかし、こんなレベルの仕事しか出来ない課長にもショックは隠せないし情けない。
けれどそれ以上に腹立たしいのは、データにパスワードを設定しなかった自分だ。