あなたとホワイトウェディングを夢みて
「ここは何としてでも我慢だ。忍耐力を養う良い場になるではないか」
留美がどんなに高慢な女でも、女ならムードには弱い。ロマンチックに攻めればいいだけの事。その後はいつもの様に振る舞えば大丈夫だ。
留美にも一応胸はある。多少膨らみが乏しくても二つ揃っていれば問題ない。見つめる瞳も二つ、口付ける唇が一つあれば十分だ。
留美の女体を理想像と重ね合わせ妄想する。『これなら大丈夫だ』と、ブツブツと呟きながら自分なりに対策を練る。窓から見えるビジネス街の高層ビルを眺めながら――
そして、ランチタイムが終わり午後の就業開始時刻。
秘書に午後は誰も通すなと指示していたが、内線連絡も無しに専務室のドアを誰かがノックする。
冷ややかな声で『誰だ?』と訊くと、『佐伯です』と留美の声が聞こえてくる。アポ無しは追い返すところだが、早速、獲物の留美がやって来たのだ。
郁未が自らドアを開け『どうぞ』と快く部屋へ招き入れると、両手に資料を山積みにした留美が入って来る。
「な、なんだ? その資料は?」
両手が塞がった状態でここまでどうやって来たのか、疑問に思った郁未が驚きの目で留美を眺めていると、スタスタと歩く留美は郁未のデスクの上へ資料をドンと置く。
「や、やあ、……随分早く作業が終わったんだね。流石に佐伯君は違うね」
歯が浮きそうなセリフに自己嫌悪に陥りそうだ。