あなたとホワイトウェディングを夢みて

 うまい事、父親に乗せられた感はあるものの、この賭けに勝てば縁談はお流れとなり、しばらくは結婚話もないだろうと、郁未は高を括る。
 それに今回の賭けは、人生経験も兼ねた社会勉強の一つと考えればよい。人生とは好むと好まざるとに関わらず、愛想のいい専務を演じる必要が必ず起こるものだ。

「それにしてもとんでもない父親だな。自社の社員を息子の賭けの対象にするなど。しかも、女を捨てるのが俺のお得意だと? 冗談じゃない。女達は俺じゃなくて、俺の金に惚れているんだよ」

 郁未が美しくて見事なプロポーションの女性を欲しがる様に、女性らは郁未の外見と懐を狙って近付いて来る。だから、別れ際にそれなりのモノを渡せば、彼女らは引き際は心得ている。
 果たして、留美を落とした後、彼女らと同じ様に別れる事が出来るのか。
 ランチを早々に終えた郁未は専務室に戻り、コーヒーを片手に窓の外を眺めていた。

「アイツ絶対に処女だよな? キスの経験あるのか? そもそも世の中には男と女しかいない事を理解しているんだろうな?」

 留美を口説く方法を考え様としても、粗探しをしてしまう。
 留美を一人の女として誘惑し、キスしてベッドへ連れ込む、これほど難しいミッションはないだろうと既に凹みそうになる。
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