あなたとホワイトウェディングを夢みて

「すいません、コロッケは全部売り切れました」

 店員が申し訳なさそうに言うと、留美は一気に力が抜けてしまった。
 今日はとことんついてない日だ。売り切れてモノは無いのに、カレーコロッケの美味しそうな匂いが充満している。だからと無い物ねだりをしても仕方がない。
 すると、ふと思い浮かべた、高級ホテルで美女と豪華なディナーをする郁未の姿を。
 憐れにも自分は、一個八十円のカレーコロッケにすらありつけない。

(私がこんな目にあうのも絶対に専務の所為よ。ああ、なんて最悪な男なんだろう)

 他の店へ行くのも面倒だと、いつもは素通りする惣菜へ目をやる。すると、鮮やかな惣菜が目に飛び込んでくる。それは甘くて美味しそうに見えるが、手に取ると少し鼻にツンとくるものがある。

「これ何ですか? 赤くて美味しそうですけど」

 留美が気になって店員に聞くと、本日のオススメ惣菜と教えてくれた。

「お客さんの要望で週に一回だけ出す惣菜なんですよ」

 野菜炒めに似た惣菜だが、かなり赤っぽい色が気になる。

「この赤いのって唐辛子ですか?」
「唐辛子じゃないけど。似たようなものかな。それ一個余っているから半額でいいよ。持ってかない?」

 半額と聞けば一人暮らしの留美にとっては一番好きな言葉だ。迷わず「買います!」と威勢よくそれを購入した。
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